アンティークコインの価値と歴史

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エリザベス2世の第一肖像が刻まれた歴史的なコインの写真

【第1肖像】若きエリザベス2世の初々しさ──メアリー・ギリック版コイン徹底ガイド(1953~1968年)

みなさま、こんにちは。
アンティークコインの世界へようこそ。
本日は、エリザベス2世コインシリーズの第一肖像についてご一緒に深掘りしていきましょう。1953年から1968年にかけて発行されたメアリー・ギリック版ヤングエリザベスの魅力と、その背景にある歴史をご紹介します。

第一肖像の魅力に迫る

前回の記事では、エリザベス2世コインの全体像と5つの肖像デザインについてご紹介しました。今回は、その中でも特に第一肖像(1953~1968年)に焦点を当てます。メアリー・ギリックが手がけたこの時期のコインは、若き女王の初々しさが感じられるデザインで、コレクターの間でも非常に人気が高いです。では、まずは第一肖像が誕生した背景から見ていきましょう。


第一肖像が誕生した背景(1953年~1968年)

メアリー・ギリックとは?

メアリー・ギリック(1881-1965)は、イギリスの著名な彫刻家であり、特にエリザベス2世の肖像彫刻で知られています。1952年、エリザベス2世の即位に伴い、新しい硬貨に刻印する肖像画のデザインを公募しました。この時、ギリックはなんと71歳!!

ギリックは、17人の応募者の中から選ばれ、その独創的なデザインが高く評価されました。彼女のデザインは、エリザベス2世を若々しく、親しみやすい姿で描いたもので、女王は月桂冠を身に着け、右向きに描かれています。

戴冠していない女王の肖像画という斬新なアイデアは、1953年から1968年まで発行されたイギリスの硬貨、およびすべてのMaundy money(貧しい人々に施すための特別な硬貨)に使用されました。

歴史背景

1950年代のイギリスは、第二次世界大戦後の復興期にありました。エリザベス2世が即位したのは1952年で、彼女の若さと新鮮なイメージは国民に希望と安定をもたらしました。この時期、イギリスは経済的にも社会的にも大きな変革を迎えており、エリザベス2世の肖像が刻まれたコインは、その象徴としての役割を果たしました。

また、1950年代から1960年代にかけては、イギリス王室が国際舞台での存在感を強める時期でもありました。エリザベス2世の肖像が刻まれたコインは、国内外での王室のイメージを形成する重要なツールとなりました。


デザインの特徴

ヤングエリザベスの横顔

第一肖像は、メアリー・ギリックによってデザインされ、若々しく生き生きとしたエリザベス2世の横顔が特徴です。以下に、そのデザインの具体的な特徴を挙げます。

  • 表情:穏やかで親しみやすい微笑みが印象的。女王の若さと柔らかな人柄を表現しています。
  • 王冠:女王は月桂樹を身に着けており、これは親しみやすさと若々しさを象徴しています。
  • 髪型:当時の流行を反映したヘアスタイルで、柔らかなカールが特徴的。王室の伝統を守りつつも、現代的な感覚を取り入れています。
  • レタリング:コインの文字部分には「ELIZABETH II DEI GRATIA REGINA FID. DEF.」(神の恩寵により、忠実な守護者としての女王エリザベス2世)が刻まれており、格式高い印象を与えます。

デザインの意図と評価

ギリックのデザインで最も興味深いのは、おそらく、エリザベス女王に儀式用の王冠をつけずに描くという彼女の決断です。これはエリザベス女王の静かな威厳と謙虚さを表現するための動きだとされています。このデザインは、戦後復興期の新しいエリザベス朝を象徴し、若く活気に満ちた女王像を通じて国民に希望と安定をもたらす狙いがあったと考えられます。メアリー・ギリックは、若くて活気にあふれ、人々と共にある存在として、このイメージを作り上げていたのだと思います。

細部へのこだわり

メアリー・ギリックのデザインは、細部にまでこだわり抜かれています。エリザベス2世の顔のラインや目の表情、王冠の装飾までが精緻に彫刻されており、見る者に深い印象を与えます。また、コインの輪郭は滑らかであり、手に取った時の質感も優れています。

デザインの改良と課題

初期の制作段階では、ダイマスターのレリーフが不十分であったため、肖像画の刻印が弱く、顔の特徴や肩のドレスのひだが見えにくくなるという問題が発生しました。しかし、その後、ダイの再カットによってこの問題は解決され、デザインのクオリティが向上しました。


メアリー・ギリックがデザインしたコイン

メアリー・ギリックがデザインしたエリザベス2世の肖像画は、イギリスだけでなく、オーストラリアを含む様々な英連邦諸国の硬貨にも使用されました。以下に、代表的なコインを表にまとめました。

コインの種類発行年額面
ソブリン金貨1957年-1968年1ポンド
ニューヨーク博覧会記念クラウン1960年5シリング
チャーチル記念クラウン1965年5シリング

各コインの特徴

ソブリン金貨(1ポンド)

メアリー・ギリックがデザインした1ポンドのソブリン金貨は、第一肖像の典型例です。高純度の金を使用し、その美しいデザインと重量感が特徴です。

ニューヨーク博覧会記念クラウン(5シリング)

1960年に発行されたこのコインは、ニューヨーク博覧会を記念して制作されました。女王の肖像とともに、博覧会のシンボルが描かれています。

チャーチル記念クラウン(5シリング)

1965年に発行されたこのコインは、第二次世界大戦の指導者ウィンストン・チャーチルを記念して制作されました。女王の肖像とチャーチルの姿が共に描かれています。


投資・コレクション視点での魅力

希少性・人気度

第一肖像は、エリザベス2世が即位した直後のコインであり、1953年から1968年にかけて発行されたものです。これらのコインは、発行枚数が多いため比較的入手しやすい一方で、状態の良いものや限定的な発行テーマが存在するため、コレクターの間では高い人気を誇ります。

特に、メアリー・ギリック版のデザインは、その後の肖像家によるデザインとは一線を画し、歴史的な価値が高いため、長期的なコレクション対象としても魅力的です。

価格推移の事例

第一肖像のコインは、特に状態が良いものや限定的な発行テーマのものは、オークションで高値が付くことがあります。以下はその一例です。

1953年戴冠式記念コイン

初代肖像を用いた戴冠式記念コインは、発行枚数が限定されているため、コレクターの間で高い評価を受けています。状態が良いものは、相場よりも大幅に高い価格で取引されることが多いです。

1953年 エリザベス2世 戴冠式記念コイン 直近の価格データ
・PF68UC 2021年 1月 $8,400(約87万円)
・PR67DCAM 2019年 4月 $4,080(約46万円)
・PR65DCAM VIP 2023年 12月 $3,360(約50万円)
・PR64DCAM VIP 2015年 4月 $3,055(約37万円)

HERIAGE AUCTIONS

1960年代の特殊発行コイン

一部の特殊テーマや記念イベントに合わせて発行されたコインは、発行枚数が少ないため、希少価値が高まります。特に完璧なプルーフグレード(PF70など)で保存されているものは、オークションで高額落札される傾向にあります。

真贋や状態(グレード)の注意点

古い年代のコインは、使用頻度が高いため、摩耗や汚れが見られる場合があります。コレクションや投資を考える際には、以下のポイントに注意が必要です。

  • 真贋保証
    高額なコインの場合、模造品や偽物が存在するため、信頼できる専門店や鑑定機関(例:PCGS、NGC)の認証を受けたものを購入することが重要です。
  • 状態(グレード)
    コインの状態はその価値に直結します。完璧な状態やプルーフグレードのものは、価格が高くなる傾向にあります。一方で、使用感が強いものや傷が多いものは、価値が下がるため注意が必要です。

時代を映す“若き女王”のロマン

歴史ドラマ性

第一肖像が刻まれた1953年から1968年は、エリザベス2世の若き日を象徴する時期であり、この期間の硬貨は彼女の治世初期の輝かしい瞬間を映し出しています。この時期、イギリスは戦後の復興から経済成長へと向かい、同時に社会や文化が大きく変化しました。女王の第一肖像が刻まれたコインを見ることで、この激動の時代を追体験することができます。

1953年の戴冠式は、テレビ放送史上初めて世界的に配信され、多くの人々が「若き女王」の誕生に期待を寄せました。新しい時代の幕開けを象徴するこのイベントは、エリザベス2世が国際舞台での存在感を強めるきっかけとなりました。

また、女王は1957年にアメリカ合衆国を公式訪問し、国際的な外交活動を活発化させました。これにより、イギリスの影響力は広がり、女王の役割がさらに重要視されるようになりました。

さらに、1960年にはアン王女が誕生し、1964年にはエドワード王子が誕生しました。これらの出来事は、王室に新しい生命が加わり、国民にさらなる希望を与えた瞬間として記憶されています。

国内の変革

この時期のイギリスは、戦後の復興から社会改革へと移行する過程にありました。経済の成長とともに、文化や法律にも変化が訪れました。

1953年の大気浄化法1967年のAbortion Act1968年のRace Relations Actなど、国民生活に直接影響を与える政策が実施され、イギリス社会がより現代的な方向へ進化しました。

同時期にビートルズが登場し、音楽やファッションが一大ブームとなり、イギリスが世界文化の発信地としての地位を確立したことも特筆に値します。

こうした時代背景の中で発行された第一肖像のコインは、イギリスの新しい時代を象徴する存在として、国民から親しまれてきました。

所有する楽しさ

歴史の一部を手に入れる感覚

第一肖像が刻まれたコインを所有することは、単なるコレクション以上の意味を持ちます。一枚のコインには、エリザベス2世が若き日々に果たした役割や、イギリスが変革を遂げた時代のエッセンスが凝縮されています。

エベレスト初登頂(1953年)やFIFAワールドカップ(1966年)など、この時期の象徴的な出来事を思い起こしながら、歴史を肌で感じることができます。

戦後の希望と復興を反映したこの硬貨を所有することで、所有者はその歴史の一部に触れることができるのです。

デザインの美しさを堪能

メアリー・ギリックが手掛けた第一肖像のコインは、その彫刻の精緻さと芸術性でも評価されています。

月桂樹をかぶった若々しい女王像は、伝統と革新が融合したデザインとして、当時の国民に新しい時代の息吹を感じさせました。各硬貨のディテールには、彫刻家としてのギリックの技術と、イギリス王室の威厳が巧みに表現されており、美術作品としての価値も持っています。

これらの硬貨を鑑賞することで、芸術的な満足感と歴史的な感動を同時に味わうことができるのです。


まとめ & 次回予告

第一肖像は、若きエリザベス2世の初々しさと王室の威厳を見事に融合させたデザインで、多くのコレクターや投資家に愛されています。1953年から1968年にかけて発行されたこのコインは、エリザベス2世の若き日の象徴として、歴史と芸術の価値を兼ね備えています。

次回の記事では、第二肖像(1968~1984年)について詳しく解説します。女王がさらに成熟し、王室の象徴としての役割を強化していく中で、どのようなデザインが採用されたのか、その魅力に迫ります。お楽しみに!

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