
【第3肖像】時代を超えた優雅さ―ラファエル・マクルーフ版コイン徹底ガイド(1985〜1997年)
目次
- 第3肖像の魅力を解説
- 1985〜1997年のイギリスとエリザベス2世
- 第3肖像が採用された硬貨の詳細
- デザインの細部と評価
- 投資・コレクションの観点での価値
- まとめ
第3肖像の魅力を解説
第3肖像の歴史的背景とその意義
1985年、エリザベス2世の硬貨に新たな肖像が加わりました。それは、ラファエル・マクルーフが手掛けた第3肖像です。この肖像は、成熟した女王の威厳と親しみやすさを見事に表現し、国民から親しまれるデザインとして広く愛されています。

私自身、この肖像が施された硬貨を初めて手にしたとき、その美しさに息をのみました。デザインの繊細さと女王の表情に込められた温かみは、「このコインを所有することで、女王の時代に触れている」という特別な感覚を味わわせてくれました。
この肖像が登場した時代は、冷戦が終結に向かい、世界が新しい秩序を模索していた激動の時期でした。イギリスはその中で安定感を示し、女王の治世は希望と象徴的な存在として語られました。このコインは、時代の変化を感じさせる象徴であり、多くの人々がそのデザインに親しみを感じたのです。
ラファエル・マクルーフによる肖像の特徴
ラファエル・マクルーフのデザインは、女王の横顔を中心に構成されています。聖エドワード王冠を戴いた女王は、威厳と温かさを兼ね備えた表情が特徴的です。王冠の宝石や繊細な髪の表現は非常に精緻で、コイン全体に高い芸術性をもたらしています。
このコインをお客様にお見せすると、よく「これはアートですね」と感嘆の声をいただきます。それもそのはず、宝石の細部や髪の一本一本までが細かく彫り込まれたデザインは、まるで小さな彫刻作品です。このようなコインを所有する喜びは、単なる収集を超えた特別なものだと感じています。
また、この肖像には、女王が国民に寄り添いながらも毅然とした存在感を示すというメッセージが込められています。穏やかでありながらも、決して揺るがない威厳を感じさせるデザインは、現在でも多くのコレクターの心を惹きつけています。
初代・第2肖像からの進化

初代肖像(メアリー・ギリックによるデザイン)は、若き女王の純粋さと親しみやすさを象徴しました。一方、第2肖像(アーノルド・マシンによるデザイン)は、女王の公式な姿を強調し、気品あふれるデザインでした。
第3肖像では、これら2つの特徴が融合しています。女王の成熟した威厳を表現しつつも、その微笑みは親しみを感じさせます。例えば、王冠や髪のディテールは伝統を反映しながらも、全体のデザインは柔らかさを保っています。この肖像は、安定した治世を象徴するものとして、多くの人々に愛されてきました。
初代から第3肖像までの進化を追うだけでも、エリザベス2世の硬貨デザインがいかに豊かで奥深い歴史を持つかが伝わります。私自身、これらの肖像を並べて見比べることで、デザインを通じて時代を旅するような感覚を味わっています。コインの表情から時代の移り変わりを感じ取ることができるのも、コレクションの醍醐味といえるでしょう。
1985〜1997年のイギリスとエリザベス2世
冷戦終結と新たな国際秩序

第3肖像が活躍した1985年から1997年は、イギリスだけでなく世界全体が変革を迎えた時代でした。この期間、冷戦は終結し、ヨーロッパ全体が新たな平和と統合を目指す方向に進みました。イギリスもその一員として、国際社会での役割を模索しながら、経済と外交の新たな挑戦を迎えました。
例えば、1989年のベルリンの壁崩壊や1991年のソビエト連邦の解体は、世界に大きなインパクトを与えました。エリザベス2世は、このような激動の中でも不動の象徴として国民に安心感を与え、イギリスの安定した存在感を示しました。コインに刻まれた女王の姿は、まさにこの安定感を体現していると言えるでしょう。
イギリス国内の政治・経済の安定
この時期のイギリスでは、マーガレット・サッチャー首相やその後のジョン・メージャー首相のもとで、経済政策や社会改革が進められました。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて、金融業を中心としたロンドン経済の成長が加速し、イギリスは「ヨーロッパの金融中心地」としての地位を確立しました。
この繁栄を背景に、エリザベス2世の硬貨も安定の象徴として親しまれました。私がお客様にこの時代の硬貨をご紹介すると、「この頃のイギリスは力強かったですね」と言われることがあります。硬貨を通じてその時代の記憶に触れることができるのは、コレクションの醍醐味でもあります。
王室の活動と女王の象徴的役割
エリザベス2世はこの期間、多くの国際的な訪問や公式行事を行い、王室の存在感を強調しました。例えば、1994年のフランス国交正常化50周年記念式典や、南アフリカのネルソン・マンデラ大統領との対談は、女王の外交手腕を象徴する出来事です。

国内では、王室にとって試練の時期も訪れました。1992年、ウィンザー城で発生した大規模な火災は、多くの歴史的建造物や宝物に被害を与えました。この出来事は、王室財政の透明性が問われるきっかけともなり、女王自らが王室の改革を進める原動力となりました。王室財産の一般公開を決断し、その収益を復旧費用に充てるという大胆な措置は、国民に感銘を与えました。
さらに、チャールズ皇太子とダイアナ妃の離婚もこの時期に起きました。二人の結婚生活は注目を浴び続けましたが、その破局は英国だけでなく世界中に衝撃を与えました。女王は、家族の問題に直面しながらも王室の安定を保つべく尽力し、個人的な悲しみを超えて公務を全うする姿を示しました。

そして1997年、ダイアナ妃が交通事故で突然この世を去った際、国民の深い悲しみに寄り添う女王の姿は多くの人々の心を動かしました。厳しい批判も受ける中で、国民との絆を再確認し、より親しみやすい王室像を築くための第一歩となったのです。
これらの出来事を振り返ると、エリザベス2世が直面した試練の数々は、硬貨に刻まれた彼女の毅然とした表情に象徴されるように、王室を守り続ける強さと責任感を改めて感じさせてくれます。
第3肖像が採用された硬貨の詳細
第3肖像が使用された主要な硬貨
ラファエル・マクルーフによる第3肖像は、多様な硬貨に採用され、それぞれのコインが持つ特徴や背景がコレクターの興味を引きつけています。以下に、主な硬貨の種類と魅力を紹介します。
1ポンド硬貨(1985〜1997年)
第3肖像が登場した最初の硬貨のひとつで、広く流通しました。この硬貨の裏面デザインには、イギリス各地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の象徴が描かれており、毎年異なるデザインが採用されました。

たとえば、1987年の「ウェールズのリーク(ポロネギ)」や1994年の「スコットランドのライオン・ランパント」は、地域の歴史や文化を反映しています。これにより、日常的に使用される硬貨でありながら、収集意欲を掻き立てるシリーズとなりました。

海外のコイン友達から「この硬貨を手に取るたびに、自分のルーツを感じるんよ〜」という声を聞くと、コインが単なる通貨を超えた存在であることを実感します。
ソブリン金貨
ソブリン金貨は、セントジョージとドラゴンが描かれた伝統的なデザインを裏面に持ち、投資用としても収集用としても人気です。第3肖像が採用された1985年から1997年までの間、特にプルーフ仕上げ(収集家向けの特別仕上げ)の硬貨が注目を集めました。

コレクターに人気が高いのは、発行年による微妙な違いです。たとえば、1989年の「ソブリン発行500周年記念」には、通常のセントジョージとドラゴンではなく、紋章が裏面に描かれた特別版が発行されました。こうした特別版は、希少性と歴史的意義から高値で取引されることが多いです。
5ポンド金貨(記念コイン)

特別なイベントや周年記念を祝うために発行された記念硬貨です。エリザベス2世の生誕70周年を記念して1996年に発行されたものは、特にコレクターの間で高い人気を誇ります。デザインには、女王の成熟した姿がエレガントに描かれ、裏面には王室の伝統を象徴する要素が織り込まれています。
個人的にこの硬貨を初めて見たとき、金色に輝く女王の肖像と、その背後に込められた歴史の深さに感銘を受けました。この硬貨を所有することは、まるで英国王室の一部を手元に置くような特別な感覚をもたらします。
発行枚数と希少性
これらの硬貨は、発行年や仕上げ方法によって希少性が異なります。たとえば、プルーフ仕上げのソブリン金貨や記念5ポンド金貨は、発行枚数が限られているため、特に高い価値を持つことがあります。1996年の5ポンド金貨は、限られた発行枚数と特別なデザインから市場で非常に人気が高く、今でもオークションで注目の的です。
第3肖像硬貨の収集の楽しみ
これらの硬貨を収集することで、単なる通貨以上の価値を手に入れることができます。デザインの変遷や発行背景を知ることで、硬貨が時代を語る生きた歴史書であることを実感できるでしょう。お客様にこの話をすると、「もっといろいろな種類を集めてみたい!」という声をいただくことが多く、私もつい熱が入ります。
第3肖像が描かれた硬貨は、芸術性と歴史的意義を兼ね備えたコレクターズアイテムとして、これからも多くの人々を魅了し続けること間違いなしです!!
デザインの細部と評価
ラファエル・マクルーフのアートスタイル
第3肖像のデザインを手掛けたラファエル・マクルーフは、英国を代表する彫刻家として知られています。彼のスタイルは、クラシックな要素と現代的な感性を融合させることに特徴があります。マクルーフの作品は、細部へのこだわりと人物の内面を表現する力に定評があり、エリザベス2世の肖像においてもそれが存分に発揮されています。

マクルーフが描いた女王の横顔は、聖エドワード王冠を戴き、威厳と親しみやすさが共存しています。特に王冠の宝石の輝きや繊細な髪のラインは、見事な職人技を感じさせます。店主としてこのコインを手に取った瞬間、「これはただの通貨ではなく、アートだ」と感動を覚えたのを鮮明に覚えています。
肖像画の威厳と親しみやすさの両立
エリザベス2世の第3肖像は、女王の成熟した姿を描いています。その表情には、治世の円熟期を迎えた女王の威厳が漂いながらも、微かな微笑みが親しみやすさを感じさせます。このバランスの取れたデザインは、国民に安心感を与え、同時に女王としての存在感を強調しています。
コレクターからも「この肖像には時代を超えた魅力がある」という声をよくいただきます。特に、柔らかな曲線で描かれた頬のラインや、目元の穏やかさには、デザイナーの愛情とリスペクトが込められていると感じます。
裏面デザイン「セントジョージと竜」の変遷
第3肖像の硬貨の裏面には、伝統的な「セントジョージと竜」のデザインが採用されています。このデザインは1817年にベネデット・ピストルッチによって初めて描かれたもので、イギリスの硬貨における不朽のテーマとして親しまれてきました。

1985年から1997年に発行された硬貨でも、このデザインは忠実に引き継がれています。ただし、製造技術の進化により、細部の彫刻がより立体的で鮮明になっています。セントジョージの鎧の模様や、竜のうねる体の表現は、時代を経ても色褪せない迫力を持っています。
このデザインについてお客様と話をしていると、「竜の表情やセントジョージの動きに、物語を感じます」という感想をよく耳にします。確かに、この裏面デザインは見る者の想像力を掻き立て、硬貨そのものに歴史の重みを与えているように思います。
投資・コレクションの観点での価値
発行枚数と希少性の分析
第3肖像が採用された硬貨の中でも、特に5ポンド金貨やソブリン金貨は収集家の間で高い人気を誇ります。その理由のひとつは、発行枚数が限られていることです。

例えば、1985年から1997年の間に発行されたソブリン金貨は、通常版だけでなくプルーフ版も製造され、それぞれ発行枚数に大きな差があります。特にプルーフ版は、発行数が少なく高い評価を受けています。具体的には、1989年の「ソブリン発行500周年記念版」のような特別デザインは、発行枚数がさらに限定され、希少性が高いコインとして知られています。
これらのコインの希少性は、状態の良いものが年々減少している点でも際立っています。未使用のミント状態や、プルーフ70(PF70)の評価を受けたコインは特に高額で取引される傾向にあります。
市場での評価と価格推移
市場における第3肖像硬貨の評価は、年々高まっています。その背景には、エリザベス2世が在位中に築いた国際的な影響力や、彼女の硬貨がもつ歴史的価値が大きく影響しています。
例えば、1985年に発行された初年度のソブリン金貨は、当時の価格と比較して現在では2〜3倍の価値がついている場合があります。また、1996年発行のエリザベス2世生誕70周年記念コインは、発行枚数が少ないため、オークションでは驚くほどの高値がつくこともあります。

さらに、2022年のエリザベス女王の逝去後、彼女の硬貨全般に対する需要が一層高まったことも価格上昇の一因です。市場全体での需要増加により、特に高評価の状態(PF70やMS70)のコインは、コレクターや投資家にとって争奪戦となっています。
将来性と投資価値
第3肖像硬貨の将来性について考えると、その価値がさらに上昇する可能性は非常に高いと言えます。エリザベス2世の硬貨は、歴史的な意義だけでなく、その美術的な完成度からも高く評価されており、コレクター市場では今後も需要が続くことが予想されます。
さらに、彼女の肖像が描かれた硬貨が発行終了となり、チャールズ3世の肖像が新たに採用されたことで、エリザベス2世時代の硬貨は過去のものとして特別な位置づけをされるようになりました。この変化は、既存の第3肖像硬貨の希少性をさらに高める要因となっています。
投資価値を見極める上で重要なのは、発行年やグレードだけでなく、その硬貨にまつわる歴史的背景やデザインの特異性です。これらを踏まえた上で収集を進めることで、長期的な価値の上昇が期待できるのです。
店主として、この時代の硬貨を所有することは、単なる投資以上の喜びをもたらすと感じます。それは、歴史の一片を手に入れるという特別な体験であり、その価値は時を超えて未来へと語り継がれるものです。
まとめ
第3肖像の総括
ラファエル・マクルーフが手掛けた第3肖像は、エリザベス2世の治世の円熟期を象徴する傑作でした。成熟した威厳と親しみやすさが同居するそのデザインは、硬貨としての実用性を超えた芸術的価値を持っています。また、裏面の「セントジョージと竜」のデザインも、英国硬貨の伝統を受け継ぎながら、その魅力をさらに引き立てています。

市場での評価も年々高まりを見せており、発行枚数の希少性やコインの状態が価格に大きな影響を与えています。投資対象としても、歴史を感じるコレクションとしても、第3肖像は特別な存在であり続けるでしょう。
店主として、これまで多くの方に第3肖像硬貨の魅力をお伝えしてきましたが、そのたびに感じるのは、この硬貨がもたらす「歴史と芸術の融合」に対する感動です。一枚の硬貨を手にした瞬間に広がる物語の世界――それは、まさにコレクションの醍醐味です。
第4肖像(1998〜2015年)の魅力予告
次回は、第4肖像にスポットを当てて、その魅力を深掘りしていきます。1998年から2015年にかけて採用されたこのデザインは、女王のさらなる成熟を描き出しつつ、新たな時代の象徴として登場しました。
デザインを手掛けたイアン・ランク=ブロードリーが表現した「より写実的な女王像」の特徴や、その硬貨が発行された背景、コレクター視点での評価について詳しく解説します。どうぞお楽しみに!