アンティークコインの価値と歴史

「アンティークコインの価値と歴史」では、aokicoinが厳選したアンティークコインの歴史や価値、現在の市場動向について詳しく解説します。収集や投資に役立つ情報をお探しの方は、ぜひご覧ください。

aokicoin掲載の1998年発行ソブリン金貨で、エリザベス2世第4肖像と聖ゲオルギウスのデザインが施された一枚

【第4肖像】コインの中に宿る“物語”──イアン・ランク・ブロードリー版徹底ガイド

みなさま、こんにちは。
アンティークコインの世界へようこそ。
今回は、前回までの「第1〜第3肖像」とはひと味違う“壮年期から晩年にかけての女王”を描いた、 イアン・ランク・ブロードリー(Ian Rank-Broadley)による第4肖像(1998~2015年)のお話です。

「エリザベス2世の肖像って、どれも似たような横顔じゃないの?」と感じた方こそ、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。

この第4肖像、実はじっくり見ると “女王の人生” そして “デザイナーのこだわり” という 2つの物語 が深く刻み込まれているんですよ。


目次

  • イアン・ランク・ブロードリーと女王の邂逅
  • 第4肖像が生まれた背景
  • コインを眺めながら味わう“2つのストーリー”
  • (1)女王の晩年期を映す物語
  • (2)デザイナーが追い求めた美学と熱意
  • “あの時代の王室”を思い出しながらコインを味わう
  • 人気の記念コイン&裏話
  • コイン投資&コレクション:実際に触れた方の声
  • まとめ&次回予告

イアン・ランク・ブロードリーと女王の邂逅

ある日、ロイヤルミントで「新しい女王肖像をデザインする」という大役に選ばれたイアン・ランク・ブロードリー。
「すでに歴史に名を残す大彫刻家・ピストルッチの影響を受けつつ、どうやって現代の女王をコインに刻めばいいのか?」
自宅の作業部屋でうんうん唸っていた彼の姿を、ちょっと想像してみませんか?

デスクに並んだ過去の肖像画…
歴代コインの写真や原型彫刻…
それらを丹念に比較しながら、「女王の一番美しく威厳ある角度」を追求する彫刻家ブロードリー…

この光景を思い浮かべるだけで、私たちもコインづくりの“舞台裏”を覗き見したようなドキドキを感じませんか?


第4肖像が生まれた背景

1998年~2015年は、イギリスにとって「20世紀末から21世紀へ駆け抜ける」転換期でした。IT革命やEUとの関係、世界的イベントが目白押し。
女王も即位から半世紀を越え、ゴールデンジュビリー(2002年)など数々の記念行事をこなしつつ、変わりゆく世界に対応しました。

コインのサイズ縮小問題

実はこの頃、硬貨のサイズが少しずつ小型化されていたため、ブロードリーは 「小さいスペースでも女王の気品を大きく表現する」工夫に頭を悩ませたそうです。
「国王の頭部がコインを埋め尽くすように描かれた」1817年のピストルッチ作品を手本に、 “大きく大胆に描く”手法が採られました。


コインを眺めながら味わう“2つのストーリー”

(1)女王の晩年期を映す物語

横顔に刻まれた“長き治世”
若き日とはまた違う“しっかりとした頬のライン”や“落ち着いた眼差し”が、第4肖像の魅力。
「もう女王は60代で、国民の支えとして何十年も君臨してきたんだなぁ……」と想像すると、 頬の深さに歴史を感じます。

ティアラに込められた歴史

女王の頭を飾るのは「ガールズ・オブ・グレート・ブリテン・アンド・アイルランド・ティアラ」
これはメアリー王妃(ジョージ5世の后)に贈られた逸品を引き継いだもので、長い王室の歴史と愛用の物語が詰まっています。

(2)デザイナーが追い求めた美学と熱意

ピストルッチへのオマージュ
「ジョージ3世の肖像をコインぎりぎりまで大きく彫る」という先人のアイデアを継承し、第4肖像もギリギリまで女王の横顔を拡大。余白を最小限にすることで、 ひときわ存在感のある彫刻に仕上げました。

全5種の肖像を研究
ブロードリーは、エリザベス2世の過去4つの公式肖像(ギリック、マシン、マクルーフ…)を徹底リサーチ。
“いまの女王”をどう写し取るかにとことんこだわり、頭の曲線や髪の流れ、ティアラの宝石まで緻密に表現しています。

こうして生まれた第4肖像は、女王自身のドラマとデザイナーのドラマが重なり合った “二重奏”のようなアート作品と言えるでしょう。


“あの時代の王室”を思い出しながらコインを味わう

アンティークコインは触れるよりも、静かに観賞して楽しむのが基本。
ですが、ただ“見ているだけ”ではなく、 「このコインが発行された当時、王室やイギリス社会はどんな風景だったのだろう?」 そう想像を巡らせてみると、コインの輝きが何倍にも増して感じられるんです。
ここでは、1998年~2015年における主な王室トピックスをいくつかご紹介しましょう。

(1)2002年:ゴールデンジュビリーの裏にあった二つの悲しみ

2002年、イギリスの街角は一斉に華やかな装いへと変わりました。
エリザベス女王が即位してから、ちょうど50周年。
“ゴールデンジュビリー”と呼ばれる記念行事によって、国中がお祝いムードに包まれ、 テレビでも街でも、どこを見渡してもユニオンジャックと笑顔が溢れていたのです。

ところが、その賑やかな舞台裏で、女王は大きな喪失を抱えていました。
2月には妹のマーガレット王女を、3月には母クイーンマザーを立て続けに失い、 深い悲しみを胸に抱えながらも、女王は笑顔で公務をこなし続けます。
賑わうパレードや盛大な祝宴の中心に立ちながら、 彼女の内心には“言葉にできない欠落感”があったのかもしれません。

そんな背景を思い浮かべながらゴールデンジュビリー記念コインを眺めてみると、 そこに刻まれた女王の横顔が、当時の毅然とした姿をそのまま写しているように見えてきます。
笑顔を絶やさない一方で、 「どんな痛みを抱えていても、王としての責務を全うする」という強い決意が、 まっすぐ前を向く“馬上の女王”のデザインから静かに伝わってくる気がするのです。
手に取ると(実際は厳重に保管するのですが…)、このコインが 「祝祭と悲しみが同居した特別な年」の証人なのだと胸がきゅっとなる思いがします。

(2)2011年:ウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウェディング

そこから数年が経った2011年、再び世界の注目がロンドンに集まりました。
ウィリアム王子とキャサリン妃(ケイト・ミドルトン)の結婚式は、 「王室の新時代」を象徴する大きなイベント。
あの長いヴェール、笑顔に包まれた街中パレード、まるで童話のワンシーンのようでしたね。

もし同じ時期に発行されたコインをそっと観賞すると、 「こんなにも祝福ムードに沸いた年に作られたんだ」と感慨深くなりませんか。
少女漫画のようなロイヤルロマンスに思いを馳せながら、 女王が奥底で「孫の幸せを見届けられるなんて素晴らしいこと」と 内心喜んでいたかもしれない――そんな想像までふくらむと、 一枚のコインが“愛あふれる王室物語”を物語っているように思えてくるのです。

(3)2012年:ロンドンオリンピックと女王の“ボンド”出演

そして2012年には、ロンドンオリンピックでイギリス全土がさらに沸騰しました。
華やかな開会式や記録ラッシュの競技、英国らしいウィットに富んだ演出……
中でも、女王とジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)の“まさかの共演”には、 世界中が度肝を抜かれたのではないでしょうか。
「まさかエリザベス女王がこんな姿を見せるなんて!」と、 国民だけでなく全世界が拍手喝采。

そんな年に発行されたコインを静かに見つめると、 「英国が本気で楽しんだオリンピック」の記憶が宿っているようで、 思わずこちらもニヤリとしてしまいそうです。
女王の“飄々としたユーモア”が、コインの光沢と重なって見えるように感じるのは 気のせいでしょうか?

(4)2013年:ジョージ王子誕生で王室さらに沸く

さらに2013年、今度はケンブリッジ公ウィリアム王子とキャサリン妃の第一子、 ジョージ王子が誕生します。
王位継承権のラインがしっかりと確立され、 イギリス中が「これで王室の未来は安泰だ」と大いに沸き立ちました。

当時のコインをそっと観賞していると、 「あの年、女王の孫が父になった瞬間を世界が祝福していたんだな……」と世代交代をリアルに感じられます。
第4肖像の女王が毅然とした横顔を保ちながら、 心の中では「曾孫を見られる日が来るなんて」と優しい笑みを浮かべていたかもしれない。そう思うと、一枚の硬貨に詰まった時間の長さが とても愛おしく感じられませんか?

このように、それぞれの年の“王室ドラマ”を思い出しながらコインを眺めると、 アンティークコインはまるで“小さなタイムカプセル”として光り出します。
祝祭や悲しみ、未来への希望、ユーモア…… その時代に生きた女王と王室が歩んできた歴史を、 私たちはコインを通して追体験できるのです。


人気の記念コイン&裏話

ゴールデンジュビリー(2002年):50年の重みを込めた“馬上の女王”コイン

2002年は、エリザベス女王の即位50周年を祝う「ゴールデンジュビリー」が大きな話題となった年。
これを記念して発行された5ポンド金貨や記念コインは、とりわけ『馬上の女王』が印象的なデザインで知られています。

しかし、このコインが生まれた背景には、ただ「豪華で華やかな記念品を作りたい」という目的だけではありませんでした。
1953年の戴冠式コインや、それまでの女王肖像を振り返りつつ、「50年という長き治世を形に表し、国民との強い結びつきを象徴したい」という思いがあったのです。

  • 馬上の女王という意匠
    1953年の戴冠式でも話題を集めた“馬上姿の女王”モチーフを、より威厳と気品を増したデザインへと発展させ、「臣民の愛によって守護されし女王」という碑文とともにコインに刻み込みました。
    馬にまたがる女王が、まるで“50年の歩みをしっかりと踏みしめている”ように見えるのも、記念コインならではのドラマかもしれません。
  • コインの特別感
    ゴールデンジュビリー記念コインは、発行枚数が限られていることから希少性が高く、オークションでも注目の的となっています。
    単に金や銀の価値以上に、“半世紀という長い歴史を王として歩んできた女王”を目に焼きつけた作品として、多くのコレクターに愛される存在です。

そして改めてこのコインを観賞してみると、
「女王即位50年を祝う晴れやかな年に、こういう形で歴史が刻まれたんだな……」と
その節目の重みをひしひしと感じます。
コイン全体から漂うのは、“人生の半ばを迎えてもなお国民を導き続ける女王”の力強さと、50年間変わらずに寄り添った王室と国民の結束。
まさに「記念コイン」を超えた“時代の象徴”がそこに存在しているのです。

2013年:ジョージ王子誕生で“新時代”を迎える王室とコインの継続性

2013年、ケンブリッジ公ウィリアム王子とキャサリン妃の第一子、ジョージ王子が誕生し、イギリス王室には一段と明るいニュースが広がりました。
王位継承権のラインがより明確になり、「これで王室の未来は盤石だ」と国中が盛り上がったのです。

しかし一方で、コインのデザイン自体は、前年度までと変わらず同じ第4肖像の女王を刻み続けていました。
ここにこそ、王室の“変わる部分”と“変わらない部分”が同居する面白さを感じませんか?

  • コインの継続性
    1998年から使用されてきた第4肖像のデザインは、新たなロイヤルベビー誕生という大きな出来事があっても、変わることなくコインを通して女王の存在感を発信していました。
  • 新世代を迎えた王室との対比
    「あの年、王室は世代交代を象徴する赤ちゃんの誕生で沸き立ったけれど、コインの女王はずっと毅然と同じ横顔を保っていたんだな……」と思い返すと、揺るぎない女王の姿を示すコインと、“新時代のはじまり”を祝う王室行事の対比がいっそう際立ちます。

こうして、コインの表面に描かれる女王が何年も同じデザインを保ち続けたからこそ、
「ジョージ王子誕生という大きな出来事があった年ですら、女王の肖像は変わらない」
という時を超えた安定感が際立ち、“新しい命”と“永続する王室”を同時に感じられるわけです。

コインを手にして眺めると、「この年は王室に新たな世代が加わったんだな……」
という生々しい記憶とともに、「でも、女王は常に同じ毅然とした姿で国を見守っていたんだな」という気持ちが同居し、長き治世を支える“安定したシンボル”としてのコインの魅力を再認識するはずです。

そこにこそ、「一枚の硬貨が、新時代を迎えた王室の未来と、長く続く女王の風格とを同時に映している」というアンティークコインならではの深みが宿っているのではないでしょうか。

豆知識: ロイヤルミントの現場では、多彩な記念コインを製造するため、 “裏面担当”や“表面担当”が一丸となって膨大なリサーチや試作を重ねています。
デザイナーたちの熱意が一枚一枚に注がれているんですね。


コイン投資&コレクション:実際に触れた方の声

コレクターKさん (在庫リストから購入)

「第4肖像の5ポンド金貨を見て、最初は『ちょっと地味?』と思ったんですが、
ルーペで覗いたらティアラや目元がものすごく緻密でビックリ!
『なるほど、ブロードリーって凄い!』と感動して、コレクション欲が止まりません。」

投資家Nさん(オークション代理入札)

「エリザベス女王コインは今後発行終了となるし、第4肖像のゴールデンジュビリーは特に需要が高いと聞いて探していただきました。
値上がりを期待した面ももちろんありましたが、手に取ったときの感動のほうが大きかったですね。
“価値ある投資品”ってこういうことなんだ、と実感しました。」


第4肖像の総括

イアン・ランク・ブロードリーが手掛けた第4肖像は、エリザベス2世の晩年期を象徴する傑作と言えます。
熟練した彫刻技術と女王の長き治世が融合し、単なる硬貨の実用性を超えた“芸術作品”としての価値を持っているのが大きな特徴です。

コインを眺めるだけで、「女王が長年積み上げてきた風格」や「デザイナーが埋め込んだこだわり」そして「新しい時代を迎える王室のドラマ」がしっかりと伝わってくるのは、大変贅沢な体験ではないでしょうか。

さらに、発行枚数やコインの状態によって評価額が変動するため、投資・収集両面で注目を集めるシリーズでもあります。
ご興味をお持ちの方は、

をぜひチェックしてみてください。
実際に目にしたときの感動は、きっと想像以上だと思います。


第5肖像(2015~)の魅力予告

次回はいよいよ、ジョディ・クラーク版の第5肖像へと進みます。

晩年の女王をさらにシンプルかつ毅然と描いたデザインは、どんな物語を映し出しているのでしょうか?
そして、チャールズ3世コインへの繋がりも含め、“新たな王室コイン”の幕開けを深掘りしていきます。
どうぞお楽しみに!

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